月夜のドライブ

ラブレターバンバン書いて紙飛行機にして 宛てもなく空に飛ばすブログです。▶プロフィールの「このブログについて」をクリックで記事一覧などに飛べます。

moonriders Gig /Tokyo,Round and Round 2008 @ 渋谷AX

画像とにかくバンドとしてカッコイイよ、ムーンライダーズは。ふつうにそこらにごろついてる「バンド」っぽい。ルーズさを含んだ勢いも、粗さとドライヴ感のある演奏も、とてもライブ1年ぶりとは思えないし、とても“アラカン”(by岡田さん、around還暦の意)とは思えない。ふつうにカッコイイんだよな…。以下、少々サポートドラマー方面に偏りつつの感想文。(長いよ)

ムーンライダーズ
moonriders Gig /Tokyo,Round and Round 2008
2008年12月10日(水)
19:30開演(18:30開場)
渋谷AX
料金(税込み): 1F指定 \ 6,300 2F指定 \ 6,300 1F立見 \ 5,250
moonriders:鈴木慶一岡田徹かしぶち哲郎武川雅寛白井良明鈴木博文
support:夏秋文尚(Dr)


■開演

すごく久しぶりの渋谷AX、開演少し前に到着。入場して、ステージのセッティングを眺める。ほぼいつもどおりだけど、ちょい後ろに位置してることの多い博文さんのマイクが今日はびしっと前に出てて、前列左から武川、慶一、博文、良明、の、均等に横一列(博文さんと慶一さんのあいだがセンター)な並び。AX横に広いからかもしれないけど、すでにこのポジショニングに博文さんの存在感が出てたとも思えるな…(笑)。後列は高くなっていて、左から岡田、かしぶち、夏秋。

 

開演時間ぴったりに照明が落ちる。このとき、後方ふたつのドラムセットが下からのライトに照らされて、タムが内側から光るように見えてたのがほんとうにきれいだった。なんだか、“これから始まるライブ俺たちに任せとけ”っていう(かしぶちさんと夏秋さんの)静かなサインみたいで、その光るドラムセットから目が離せなかった…。

 

とか思ってると、7名様ご入場~。衣装バラバラだった昨年と打って変わって、今年はおおむね全員が黒っぽい帽子に白いシャツ、さりげないクリスマスモチーフ(慶一さんが赤と緑のボーダーマフラーだったり博文さんが赤シャツにクリスマス柄ネクタイだったり)、という出で立ち。中でも良明さん、スパンコールでギンギンにしゃれのめした黒スーツに大目立ちな背高ハット、さらにそれでは足らず大きな白い羽つけて、というさすがのド派手さ!もう、愛せるー。サポートの夏秋さんは、白シャツの首元に赤いスカーフ巻いて&黒いラメ入りハンチング目深にかぶって、という(慣れない)姿が、パリあたりの新聞売りの少年みたいでかわいかったな(笑)。1曲やってすぐ帽子もスカーフも取って、いつものラフな姿になってたけど。

 

■オープニング3曲!

1曲め、まったく予想がつかない中で始まったのは、どろどろどろりーんと薄気味悪い楽器の音の応酬。ぎえ~、いきなりヤバい雰囲気満載…!イントロからしばらくは何の曲かわからなくて「銅線の男」か?「天罰の雨」か?とか考えてたんだけど、慶一さんのボーカルが「サーカスが…飛ぶよ…」って、うわ、「こうもりの飛ぶ頃」かーーー!もうこれ、ほんと正気が吹っ飛ぶような演奏だった。ゆらゆら揺れまくる慶一さんのギターに、気持ち悪さ全開でうねる良明さんのギター。闇の底で鳴ってるようなツインドラムの空恐ろしい音!あー、かしぶちさんと夏秋さんのこの重たい音、大好きだ…。とか思ってたら、良明さんが後ろの夏秋さんのほう振り向いて煽るわ煽るわ、夏秋さんも負けじと熱く叩いて、すさまじくバトってた!!ふはー、即死する…。それにしても重いわ暗いわ気味悪いわ、こんな曲をオープニングに持ってきてあろうことか延々20分近くも演奏し倒すライダーズ、空気読まなすぎて最高…。でもね、この独特の偏屈で重たい演奏こそ、ライダーズ以外には絶対に出せない音だということを考えると、この暴挙もとても彼ららしいオープニングだと思ったよ。少なくとも、私は好きだ!!やーこのすさまじい演奏、もう一回聴きたいー、ぜひDVDかせめてCDに。

 

ここですでに意識はじゅうぶん吹っ飛んでたのだけど、次の曲慶一さんが「Super C」ってコールするから耳を疑ったよ、えええマジっすか!?そしたらほんとにあのブツ切りのフレーズを慶一さん武川さん良明さんで歌ってたもん、メチャメチャウケたー。さらにそこから次の曲、武川さんのトランペットが高らかに“あのフレーズ”を鳴らしたときの鳥肌立つ感じ!!「僕は走って灰になる」、わあ…まさか、この曲を今、ナマで聴けるなんて…!ピンと張りつめた極北の演奏、狂気と背中合わせのまさにムーンライダーズ。参るなあ…。

 

■メンバーボーカル曲

MCはさんで、次からはライダーズの十八番、メンバーボーカルをフィーチュアしたナンバーを次々と。まずは良明さん「Sweet Bitter Candy」。私がムーンライダーズの代表曲1曲を選べと言われたらコレじゃないかと思ってる奇跡の名曲。いつ聴いてもいい曲だけど、冬のこの時期に聴くのは格別。良明さんのボーカルってのびやかでやさしくて、魅力的だなあ…。

 

次が岡田さんで、まさかまさかの(この日は「まさかの」ばっかりだったけど)「ぼくはタンポポを愛す」!うっわーーーーー!ナマで聴くのはじめてかも!この鬱陶しいぐらいにおセンチな詞&メロディを、岡田さんの甘いヴォコーダーボイスと、激甚に重たい演奏で。はー、好きだ…。“ロマンシングアドベンチャー・コンビ”、鈴木博文岡田徹、さすがだな。泣ける。

 

次に博文さんの歌い出した曲、最初タイトル思い出せないぐらいだったけど「僕の努力」か、またえらいところから選んでくるなー(笑)。ステージに、70年代アメリカンロックの乾いた風が吹く。この世界もあるのがライダーズの懐の深さ。

 

武川さんボーカルは「最後の木の実」。12月らしく楽しくね。この日、武川さんの声のレンジすげーなと思いながら見てた、慶一さんのオクターブ上を歌い、博文さんのオクターブ下を歌い。各自ボーカルコーナー、なぜかかしぶちさんがなかったのがすっごく残念~。あのフェロモンボーカルにうっとりしたい女子多数だったと思うんだけど。ここでメンバー紹介、良明さんから時計回りに始まり、岡田さん主導でリズムつけながら会場全体での慶一さんへのレコ大受賞おめでとうコールなども挟みつつ。

 

■新曲2連発

で、後半戦、イキナリまだ配信にもなっていない新曲「恋はアマリリス。またえらく甘ったるい曲で、この人たちが罹ってる「青春」という病は50になっても60になってもたぶん70になっても直んないんだなー(笑)。ホントにもう、しょうがなすぎてステキ。

 

次の「Tokyo, Round & Round」がすっごくよかった!!ついこのあいだ配信になったばかりの新曲で、音源では軽やかなエレポップ風味の印象だったけど、この日演奏されたこの曲は、もっともっとストレートで重たいバンドサウンドになってて。私はこれこそライダーズ!と思うんだよね。岡田さんや慶一さん発信のエレクトロな指向が、生のバンドサウンドで強靭に走り出したときに。このプロセスの見事さで、ライダーズに勝てるバンドは日本にはいないと思う。

 

■『MOON OVER the ROSEBUD』2連発

さらに慶一さんのMC「2年前に出たアルバム『MOON OVER the ROSEBUD』から。この曲はライブでははじめてやります」で「Rosebud Heights」、待ってました~!レコ発ライブでも演らなかったこの曲、やっとナマで聴けた…。あらためていい曲だね。良明さんのギターカッコよかった。そして同じアルバムから「Cool Dynamo, Right on」ムーンライダーズの「青春唱歌」カテゴリー(勝手に名付けてます)最新代表曲だね、またいっしょに歌っちゃったよ。「虹」とか「鬼火」のキーワードでいちいち泣きそうな気持ちになる。

 

■博文さん

暗転で楽器持ち替えがあって、あれ?博文さんがハンドマイクになってる?と思ったら、スカっぽいリズムが入ってきて博文さんのハープが鳴る、なんと「Modern Lovers」だったよ!どっひゃーこれには驚いた!スカってどうもあんまり好きじゃないんだけど、この日のこれはクールでソリッドで、スカ・パンクっていうのかなー、ときどき入る夏秋さんのドラムのおかずもトリハダモノでカッコよかった!それにしても、博文さん、すげかったな~(笑)。客席のあいだを走り回るわステージに寝転がって歌うわ、そのたびにオーディエンスが「おおーっ!」「ひゅーっ!」って沸いて、愛されキャラ博文さんの魅力全開!このときさりげに慶一さんが博文さんのベース弾いてたのにも、猛烈にカッコよさを感じた。

 

■本編ラスト

前の曲の余韻を割るように激烈なドラムが入ってきて、「彼女について知っている二、三の事柄」!!!!この日のツインドラム、ホントにカッコよかったな…。ま、かしぶちさんと夏秋さんだからドラム叩かなくてもふつうにそこにいるだけでカッコいいんだけど(うるさいね)、後方ふたつの要塞のようなセットで、同じタイミングでスティックが舞って同じタイミングでシンバルが震えるのを見る快感、もうたまらないものがあった。またムーンライダーズは楽器の音が多くて派手だから、ドラムがふたりでどんなにヘヴィーな音出してもぜんぜんオッケー、夏秋さんほんとキモチよさそうに叩きまくってたなー。

 

■アンコール

本編はここで終わり、客席の拍手をはさんでアンコール「BEATITUDE」!こっ、これが…夏秋さんとかしぶちさん、ツインドラムのバトルで幕を開けるイントロ。もう、息止まった…! 4小節ずつ?を数回やリとりするだけの短いバトルだったけど、必殺にもほどがある。スピーディでしかもずしりと重たい、殺傷力の高い銃弾のような音。こんなドラマーふたりの野放し、ほんとヤバいって…。カッコよさに事切れてそのあとをあんまり覚えてない…。

 

武川さんのヴァイオリンに合わせて(あれは何の曲なのかな、ケルト民謡みたいなやつ)、客席に下りた慶一さんと博文さんが客と輪になってぐるぐる走り回る、宴会的なお楽しみもありつつ。次のメドレーがまたヤバかった。「シリコンボーイ」~「Video Boy」~「火の玉ボーイ」、時代を遡っていく「ボーイ」3連発ってね、泣けることするよねほんとこのバンドは。「シリコンボーイ」、夏秋さんのシンセパッドが登場、ポコポコピュンピュンかわいい音出してたー。そしてスカからオルタナアレンジへと身を翻す「火の玉ボーイ」の名曲っぷりにあらためて驚かされる。アレンジがどうあろうと、あの音符の動きのうつくしさは独立してしんと輝いてる。大ラスは明るく楽しくポップに「スプーン一杯のクリスマス」。1曲めあんな演奏したバンドとは思えねーな(笑)。

 

■この日

70年代から80、90、00、まだ世に出ていない新曲まで、32年(「こうもり」も入ってるからそれ以上だな)の歴史を、現在の彼らが引っかき回すようなライブ。「今」というこの地点に立ってるムーンライダーズがいつでもいちばんやんちゃでカッコよくて、過去の彼らは舌打ちしてるだろうな。と同時に、ムーンライダーズのメニューの多さ(というよりむしろ無法さか)にもあらためて気づかされるようなセットリスト。土曜の午後のテレビみたいとも思ったよ。次から次へとよくもまあいろんなものが出てくる。この“志の高い節操のなさ”こそムーンライダーズだね。

まだ書きたいこといくらでもあるんだけどキリがないので、それはまたにして、とりあえずここでアップしときます~。

 

【追記】

そうだ、ひとつ忘れられないシーンがあった。アンコールラストの「スプーン一杯のクリスマス」が終わって、メンバーが客席に挨拶しようとステージ前方に並ぼうとしてたとき。サポート夏秋さんがまず、かしぶちさんのドラムセットに歩み寄り、かしぶちさんが彼を迎え、その瞬間のふたりがちょっと妬けちゃうぐらいにすごくいい笑顔で。さらに立ち上がったかしぶちさんはお茶目な仕草で夏秋さんをピッタリ引き寄せて、結局、慶一さんたち5人は前で、かしぶちさんと夏秋さんはセンター後方のかしぶちさんのドラムセットのところにとどまったままで、客席に手を振ってた。ドラマーにとってはまさにあの場所が誇り高い「砦」であるはずで、そこで手を振るふたりの姿に、「戦友」なんて言葉まで思い浮かんで、じーんとしちゃった…。すごくいいシーンだった。

 

*セットリスト
01 こうもりの飛ぶ頃
02 超C調
03 僕は走って灰になる
04 Sweet Bitter Candy
05 ぼくはタンポポを愛す
06 僕の努力
07 最後の木の実
08 恋はアマリリス
09 Tokyo, Round &Round
10 Rosebud Heights
11 Cool Dynamo, Right on
12 Modern Lovers
13 彼女について知っている二、三の事柄

encore

14 BEATITUDE
15 武川さんヴァイオリン曲
16 シリコン・ボーイ~Video Boy~火の玉ボーイ
17 スプーン一杯のクリスマス